旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「あれ、絶対誘う口実がほしくて桐島さんに仕事頼んだよねー」
「さすが『完璧女子』。相変わらずモテる」
気づかれないよう横目で見ると、それは同じ部署の女性社員たちだ。
『さすが』、その言葉がいい意味で言われていないことくらい、声のトーンでわかる。
「でも確か桐島さんって、年上の御曹司と同棲してるんだっけ」
「え?年下の男子大学生飼ってるんじゃなかった?」
「ていうかこの前営業で大きな契約取ってきたのって、取引先をあの手この手で落としたかららしいよ」
その証拠に、続けられる言葉は嫌な噂話ばかり。
えーっ、うそーっ、と密やかに盛り上がる声は、一応聞こえないようにしているつもりなのだろうけれど、丸聞こえだ。
けれどそれに対してなにひとつ反論することもなく、私は白いショルダーバッグを手に立ち上がる。
「すみません、お先に失礼します」
にこりと微笑み言った、たったひと言。
それに気圧されたかのように、顔を引きつらせ「お、お疲れ様……」と呟いた彼女たちに、私はヒールをコツコツと鳴らし部屋を出た。