旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「ど、どうしたの?」

「明日の会議に使う資料のデータ……消えた……」



恐る恐る問いかけると、女性社員は涙目で頭を抱えた。



「どうしよう、今日中にこれ仕上げてまとめたもの、100部用意しなきゃいけないのに……」

「あーあ、残業決定だな。お疲れ」



同情するように言って笑う上司に、彼女はガバッと顔を上げる。



「困ります!今日彼氏との記念日で、お店も予約してあるんです〜!しかも高級店!絶対残業できません!」

「そんなこと言ってもなぁ……」



そう言いながら、上司は私の方をチラッと見る。

それにつられるように、周囲もチラ、チラッとこちらを見た。



……これ、確実に私が『私やるよ』って言うの待ってるよね。

でも、定時であがりたいのは皆同じだし、そもそも自分の仕事をデートのために人に頼むってありえないでしょ。

というかなんで彼女も前日に作る?事前に作っておきなさいよ。

こっちはやっとひと仕事終えたところで、私だって早く帰って涼宮くんに浸りたい。



そう言いたくなるけれど言えるわけもない。

気持ちをぐっとこらえて、笑みを作って手をあげた。



「私、やりましょうか?」



そのひと言に、彼女含め周囲は『待ってました』と言わんばかりに表情を明るくする。


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