旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
変なこと考えてないで早く終わらせて帰ろう。そう気を取り直し用紙に手を伸ばす。
するとその時、突然うなじにヒヤッとした冷たさを感じた。
「ひゃぁっ!!」
突然のことに驚き、声をあげて振り返る。
するとそこには、呆れた顔でこちらを見る津ヶ谷さんがいた。
彼が手にしている缶コーヒーに、冷たさの正体はそれだったのだろうと察した。
「いきなりなにするんですか!」
「目ぇ覚めただろ」
目が覚めたっていうか、びっくりして心臓に悪いっていうか……。
驚きからバクバクと鳴る心臓を落ち着ける私に、津ヶ谷さんは「ん」と缶コーヒーを差し出す。
わざわざ、買ってきてくれたのかな。
「すみません、ありがとうございます」
気遣いに甘えるように受け取ると、缶を開けひと口飲む。
控えめの甘さの中から感じた濃い苦味が、疲れ始めていた頭を冴えさせた。
「あれ?そもそも津ヶ谷さん、どうしてこんな時間にここに?」
「接待終わって会社の前通ったらまだ明かりがついてたから。わざわざ来てやったんだよ、感謝しろ」
そうだったんだ。
あれ、でもうちの会社から繁華街には少し距離があるし、家に向かうにも遠回りになる。
なのにどうして……。