旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「あとどれくらいだ?」
「えっと、これ100部分まとめるだけです」
「はぁ!?100!?」
津ヶ谷さんは「ったく」と面倒臭そうに眉をひそめ、スーツの上着を脱ぐ。
そして袖をまくると私の隣の席に立ち、用紙をまとめる作業を始めた。
「え……手伝ってくれるんですか?」
「ひとりよりふたりの方が早いだろ」
それは要するに、手伝ってくれるという意味なのだろう。
「さっさと終わらせて帰るぞ。接待してきたって言ってもまともに飯なんて食ってないから腹減った」
不機嫌そうに言いながら、彼は手際よく用紙をまとめていく。
『手伝ってやるよ』って、はっきり言えばいいのに。素直じゃないなぁ。
だけど、わざわざ会社に寄って、様子を見にきて、コーヒーを買って来てくれた。
その優しさが嬉しくて、心の中をあたたかくしてくれる。
バカだって思っているんだろうな。だけどそれでも、こうして助けてくれる。
今は仮面をかぶるのをやめて、素直に甘えてみよう。
そう決めて、私も再び手を動かし始めた。
ふたりきりの夜のオフィスには、紙をめくる音とホチキスで綴じる音が響く。
その中で、不意に津ヶ谷さんがぼそりとつぶやいた。