旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「ふぁ〜……」
ところが、23時を過ぎたあたりで大きなあくびがこぼれた。
うう、眠くなってきた。
だけど津ヶ谷さんもまだ帰ってくる気配ないし、起きていたいし……でも眠い。
気合を入れ直し再度料理本を見る。けれど文字の羅列に余計眠気は増して、うとうとしているうちに全身の力が抜けた。
津ヶ谷さん、いつもこんな遅くまで大変だな。普段から仕事も多く抱えて、取引先も回って、本当にすごいや。
いずれ親会社に行くのなら、今の仕事もそこまで必死にやることないと思う人もいるだろう。
けれど、そこで手を抜くことなくきっちりと勤めるところが、津ヶ谷さんの誠実さを表している気がした。
そんな彼に、私にできることなんて限られているから。
せめて偽物でも、妻として、『おかえり』って出迎えてあげたい。
どれくらい時間が経っただろうか。肩に感じるあたたかさと、カチャ、と鳴る食器の音にふと目を覚ます。
「あ、起きたか」
「あれ、津ヶ谷さん……?」
テーブルに伏せてすっかり寝てしまっていたらしい。
ガバッと体を起こして見ると、帰ってきた津ヶ谷さんは丁度夕食を食べ終えたところらしく、食器を重ねて片付けていた。
室内の掛け時計が指す時刻は0時すぎ。
「今日も遅かったですね、お疲れ様です」
「あぁ、色々やることもあってな」
話しながらふと肩にある感触に気づく。見るとそれは薄手のブランケットだった。
津ヶ谷さんがかけてくれたのかな。
無理に起こすことなく、わざわざブランケットを持ってきてかけてくれた。その優しさを思うと、また胸がときめく。
台所のシンクへ食器を置いた彼は、こちらに戻ってきて私の顔をまじまじと見る。