旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
「どうかしましたか?」
「頬。変な跡ついてる」
言われて頬を触ると、微かにボコボコとした感触から斜めのシワのような跡がついていることに気がついた。
右腕に顔をのせていたから跡ついちゃったんだ。
しっかりとついているのだろう跡が恥ずかしくて、私は右手で頬を隠す。そんな私を見て津ヶ谷さんは呆れたように笑った。
「こんなところで居眠りしてるからだ。寝るなら部屋に行け」
「すみません……津ヶ谷さんを、待ってたはずだったんですけど。寝落ちしちゃって」
「俺を?なんで」
不思議そうに首を傾げた彼に、ぼそりとつぶやく。
「ひとりでごはんは、寂しいかと思って」
『子供じゃあるまいし』と怒られてしまうかもしれない。
けれど隠せず正直に言ってしまい、恐る恐る津ヶ谷さんの表情をうかがう。
すると津ヶ谷さんは「プッ」と吹き出すように笑い出す。
「ひとりでって、子供かよ」
「うっ……すみませんね」
やっぱり言われた。
けれど津ヶ谷さんはそれ以上からかうことはなく、私の隣に座るとこちらへ手を伸ばす。
そして私の頬の跡をなぞるように、そっと撫でた。
「けどありがとな、彩和」
その言葉とともに柔らかく笑う彼に、ドキ、と胸が音を立てる。