旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「別に緊張しなくていいから。普通の顔で座ってろ」

「そんなの無理ですって……」

「大丈夫だって」



想像しただけで、すでに今から緊張で震える。けれど、それを和らげるように津ヶ谷さんは私の鼻を押して変な顔にさせた。

そうやってまた人の顔で遊ぶ……。

鼻を押されたまま不満げな顔をする私を見て笑うと、津ヶ谷さんは立ち上がる。



「さて、飯も食ったし風呂入って寝る。彩和も、今度はちゃんと部屋で寝ろよ」



そして「おやすみ」と小さく笑うと、頭をぽんと軽く撫で浴室の方へと向かって行った。



なんだか、初日より津ヶ谷さんの雰囲気が柔らかくなった気がする。

平然としていた様子の津ヶ谷さんも、私に慣れてきてくれたってことかな。

そう思うと、ちょっと嬉しい。



けど、津ヶ谷さんのご両親に会うのはやっぱり不安だ。特にお母さんなんて、女性社長というくらいだし……。

いやいや、意外と普通の人で、優しい人かもしれないし。

怖いイメージばかりしていてはダメだよね。うん、そうだ。


自分に言い聞かせるように胸の中で繰り返すと、今日はもう寝ようと私は自室へ向かった。





けれどそう簡単に緊張がほぐれるわけもなく、金曜、土曜とドキドキしながら過ごした。

そして迎えた日曜日。

雲ひとつない爽やかな晴空の下、私は緊張から身動きひとつせず津ヶ谷さんの運転する車に乗っていた。

腕の中には、手土産として購入した、高級洋菓子店のお菓子を抱えて。



服装は、白い丸首ブラウスに水色のフレアスカートと清潔感重視で選んでみた。

髪も念入りに巻いて、メイクも派手になりすぎないよう気をつけた。

準備万端、のはずなのに。これで大丈夫かな、とまた不安になってきてしまう。


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