旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「いや、愁たちは時間通りだよ。父さんたちが早くに着きすぎたんだ。母さんが緊張して落ち着かないっていうから……いたっ」



そこまで言ったところで、お母さんはお父さんの太ももをぎゅっとつねったらしい。

お父さんは苦笑いでそれ以上の言葉を飲み込む。



緊張して、落ち着かない……。つまり津ヶ谷さんのお母さんも、同じように緊張していたということかな。

そう思うと、自分だけじゃないということと、緊張してもらえているということに安心感を覚えて、少しだけ張り詰めていた糸が緩んだ気がした。



「ところで、あなたが愁の結婚相手?」



ところが、すぐにこちらに向けられる厳しい眼差しに私は慌てて姿勢を正す。



「あっ、はい。桐島彩和と申します。こちら、心ばかりのものですが……」

「わざわざすまないね。どうぞ、そちらに座って」



頭を下げ手土産のお菓子を渡すと、津ヶ谷さんのお父さんはお礼を言って受け取り私たちに座るように促した。



「彩和さん、始めまして。愁の父です。いつも息子が大変お世話になっております」

「いえ、こちらこそ。ご挨拶が遅くなりまして申し訳ございません」



津ヶ谷さんのお父さんとお互いに深々と礼をして挨拶を交わす。その間もお母さんからは厳しい視線が向けられていた。



うぅ、津ヶ谷さんのお母さんはイメージ通りの厳しい女社長だった。

でも逆にお父さんが優しいタイプの人でよかった。ちょっと話しやすいかも。


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