旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです
挨拶が済んだところで、戻って来た女将が、テーブルに料理を並べ始める。
懐石料理のコースにしてくれたのだろう、お刺身や茶碗蒸し、小さめのお寿司や煮魚など、豪華な料理がたちまちテーブルを埋め尽くした。
けど、とてもじゃないけれど箸をつける余裕なんてない……!
ニコニコと笑顔を作りとりあえず出されたお水を飲む私の横で、津ヶ谷さんとお父さんは話す。
「それにしても、愁もいきなりだなぁ。珍しく自分から連絡してきたかと思えば『入籍した』なんて」
「すみません。彩和とは結婚を視野に入れての交際でしたので、話がトントン拍子に進んでしまって」
「それならそうと言ってくれればよかったのに。母さんも愁を心配してあれこれと見合い相手を探していたんだよ」
津ヶ谷さんのお父さんがポロっとこぼした言葉に、お母さんは『また余計なことを』と言いたげに睨むと、ごほんと咳払いをひとつした。
「彩和さん、だったかしら。あなたご実家はどちら?なにか家業はなさってるの?」
「実家は新潟です。父は製薬会社で働いていて、母はパートで、普通のサラリーマン家庭です」
「大学はどこの出身?今お仕事は?」
うう、一気に質問攻めだ。
しかも私がどのレベルの人間なのかを測るような質問の内容に、ひきつりそうになる顔をぐっとこらえて笑顔をキープする。
「大学は都内の短大で、現在は津ヶ……愁さんと同じ会社に勤務いたしております」
「そうか、愁と同じところに。社内結婚かぁ、いいねぇ」
ほのぼのと相槌を打ってくれるお父さんを無視して、お母さんはアイラインをしっかりとひいた大きな目でこちらを鋭く見る。