旦那様は溺愛暴君!? 偽装結婚なのに、イチャイチャしすぎです



「単刀直入に聞くわ。愁のどこがいいと思って結婚に踏み切ったのかしら」

「え!?」

「顔?それとも家?いずれ会社を継ぐという立場?」



も、ものすごく警戒されてる……!

さすがに津ヶ谷さんのお父さんも「こらこら」と諭すけれど、お母さんの視線は私を逃してはくれない。



だけど、たぶんお母さんは心配なんだろうな。

津ヶ谷さんに、彼自身を見ていない人がくっつかないように。いつか彼が傷つくことのないように。

心配して、警戒しているのだと思う。



きっと、下手な嘘は通じない。

だから私は、正直な気持ちをはっきりと答えよう。

そう心に決めて、ご両親をまっすぐ見据えた。



「愁さんは、いつも皆に慕われていて、努力家で仕事も非常に出来る方で、皆の憧れの王子様です」



優しくて、にこやかで、『王子』と呼ばれる津ヶ谷さん。

普段は真逆で、意地悪なことばかり言って、すぐからかってくる。

だけど。



「でも私は、王子じゃない普段の彼の優しさに惹かれました。意外に思うところもたくさんありますけど……でも私は、愁さんだから惹かれたんです」



ふたりきりのときだけに見せてくれる、ありのままの彼は、とても人らしくてまっすぐだから。

飾らなくていいんだって、そう安心して、私は私のままでいられるんだ。



笑顔で言い切った私に、津ヶ谷さんのお母さんは驚き、お父さんは笑ってくれた。

そんな対照的なふたりの反応を見て、それまで黙っていた津ヶ谷さんが口を開いた。


< 89 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop