今夜、色のない君と。
そう言って僕がスクールバッグの中からそれを取り出そうとすると、
秋野さんが右手で制した。
「いや、それは持っててくれると有難いな。僕よりも物の管理とか緒都くんの方がしっかりしてそうだし、ガイドブックについて記憶が曖昧な老人より、頭がしっかりしてる現役高校生が持ってる方が安心でしょ?」
「え…いや……」
「ね?だから持ってて。プレゼント」
どう言っても秋野さんは引き下がる様子はなかったので、ありがたく受け取っておいた。
「それで緒都くん。本題にはいるんだけど……あ、座らなくて平気?」
「秋野さんが平気なら」
「じゃ、このまま話そうか。花夜ちゃんも、それがキリがいいところになったらここに来てくれる?さっきのこと、緒都くんに話したいから」
「あ、はい」