今夜、色のない君と。
すると秋野さんは、花夜に目配せをし、一呼吸置いてから口を開いた。
「心当たりがあるそうなんだ」
「……何に?」
「2つの小説の作者、古川 美代子に」
「!?」
どういう……こと…?
僕は明らかに困惑した表情を浮かべていたようで、秋野さんは自分が今まで何をやってきたか、1から丁寧に説明してくれた。
「実は僕が京都に行っていた理由は、花夜ちゃん自身にある。……いや、正しくは、花夜ちゃんが出てきた絵のことについてかな」
そう言って秋野さんは、入口の側の、背景だけしか描かれていない絵を見つめた。
「あの絵、緒都くんが最初に見たときに不思議な感じがすると言っていたね。実は僕も、あの絵を家で見つけた時、確かにそう思ったんだ。この絵には何かあるんじゃないかとね」
「…僕がそう言ったとき秋野さん若干引いてましたけど」
「まさか緒都くんも同じように思ってるとは思わなくて」
なんじゃそりゃ。