溺甘系朧咲夜【完】
「流夜、咲桜来たよ」
と、カウンターの中にいて、ドアの方も見えているふゆちゃんがこっちを指さした。
勢いよく振り返った流夜くんは、心底安堵したみたいな顔をした。
「咲桜……」
「あの、流夜くん? 私はここでどうすればいいのかな? 修羅場にでもすればいいの?」
……なんかだんだん、自分勝手な怒りがわいて来た。
流夜くんがあの黒髪の女性の要望に答えられないのは間違いなく私のせいなのに、なんで私の知らない女性が、私が言うべきことを言ってしまうのか、とか、すごく自分のこと棚上げな。
……私、やな奴だな。
「その必要はないよ、咲桜。こいつは大和斎月(やまと いつき)。流夜のアメリカ時代の同輩(どうはい)で、今は同業者。関係を簡単に言い表すなら、弟、なんだってさ」
教えてくれたのは、気だるげに頬杖をついたふゆちゃんだった。
「なんでふゆちゃんが答えるの。じゃない。え……警察関係の人?」
「バカ姫もフリーの犯罪学者だから、警察の人間ではないけどね」
「ばかひめ? 姫って……でも今、弟って言ったよね? お、男の人……なの?」
このモデルレベルハリウッドレベルの美人さんが⁉
「降渡が『斎月姫』って呼んでるから影響受けちゃった。バカ姫は女だよ」