溺甘系朧咲夜【完】
……来ていたのは先生だけじゃなかった。先生の幼なじみで探偵の雲居降渡(くもい ふると)さんと、刑事の春芽吹雪(かすが ふゆき)さんが、ダイニングテーブルで私たちより先に夕飯を食べている。
二人ともこれからお仕事らしい。いつもの光景のひとつだ。
「腹括ったねえ……」
軽く身を乗り出して膝に肘を置いて頬杖をつく在義父さん。私の隣の先生が口を開いた。
「咲桜が卒業するまで、今までの関係を変える気はありません。今回の成績はご覧の通りですから、入学前のように家庭教師みたいなものに戻るだけだと思っていただければ」
「そういうことなら言うことはないけどね。咲桜が藤城に合格出来たのも流夜くんのおかげだし」
「そーそ。俺らが咲桜ちゃんに勉強教えようとすると雷の速さで飛んできて間に割って入るの」
「お前は黙って食ってろ」
先生から鋭い視線と言葉を投げられて、降渡さんはお茶碗とお箸を持ったまま肩をすくめる。
どうやらそれで退くことにしたらしい。