溺甘系朧咲夜【完】



「失礼しまーす」


「どーぞ」


昼休み、いつものように旧校舎を訪れた。


「今日のお弁当です」


「いつも悪いな」


……流夜くんに、全然変化はない。それこそいつも通りだ。


「咲桜、今日は勉強、どっちでする?」


受け取った流夜くんがそう訊いて来た。


「えと……在義父さん遅くなるって言ってたんですけど、夜々(やや)さんと箏子(ことこ)おばあちゃんがご飯一緒しよって言ってたんで、うちでもいいですか?」


夜々さんは在義父さんの年の離れた幼馴染で、箏子おばあちゃんはそのお母さん。


お隣の朝間(あさま)家の二人で、血縁関係はないけど、小さな頃から私の家族みたいな人たちだ。


「それだと俺、邪魔じゃないか?」


「そんなことないですよ。むしろみんなでご飯食べません?」


「問題ないなら、それで」


「じゃあ、今日は家で待ってますね」


そう言って、踵(きびす)を返そうとした――けど、後ろから腕を摑まれた。


「咲桜? 何かあったか?」

< 83 / 137 >

この作品をシェア

pagetop