甘くて、苦くて
文化祭の前日、
私の気持ちなんて知らない村井君と
一緒に帰る日が来た。
すごく楽しみだったのに、心が痛くて、怖かった。
クラスの人に見つかったらめんどくさいから、
という理由で近くのコンビニで待ち合わせして、
みんなが通らない道を通って駅まで帰った。
コンビニには村井君のほうが先に着いていて、
少年漫画を立ち読みしていたけど、
私が来たのに気付いて外に出てきた。
『おまたせ!』
「めっちゃ待ったよー」
『え、嘘?!』
「嘘、待ってないよ。帰ろ」
『うん!』
今まで彼氏ができたことがなかったから、
夢だった。
こんな風に好きな人と一緒に帰ること。
だから、村井君の幼馴染の存在とか、
クラスの人に見られるかもっていうこととか、
どうでも良かった。
駅までの15分は、本当にあっという間だった。
何を話したのかも覚えてないくらい緊張していた。
夢みたいだった。
気付いたら、村井君とは別れて、
自分の家の方向に向かう電車の中だった。