好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
あいつは、snow mistのカラーでもあるライトブルーの生地にピンクの桜が舞う振袖を着ていた。

長い黒髪をアップにして、白とピンクの小さな花の髪飾りをつけたあいつは、俺が知っている妹のようなほのかよりずいぶん大人びて見えた。



どんよりとした空なのに、あいつの周りだけ爽やかな空気が漂っているように見えた。

すっかり有名人になってしまったほのかの周りには、人だかりができていた。



ミーハーな女子たちが、ほのかに声をかけ一緒に写真を撮っている。

中学時代はほのかに見向きもしなかったのに、都合のいいやつらだ。

ほのかも芸能人なんだから断わればいいのに、人がいいあいつは次々と押し寄せる元クラスメイトに嫌な顔せず、一人一人笑顔で応えていた。



「蓮見君は、行かなくていいの?」

その様子を遠巻きに見ていた俺を、隣に立つ笹川が見上げた。
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