好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「蒼……」

あいつは、小さく俺の名を呼んだ。

ここで知り合いだとバレるとマズくないか……

一瞬そう思った俺は、顔色を変えずにあいつの前で立ち止まった。



あいつは緊張しているのだろうか。

俺が前まで来たのに、握手もせずボーッと突っ立っている。

俺は、仕方なく自分から右手を差し出した。



「……握手は?」

あいつは俺に言われてやっと思い出したらしく、慌てて俺の右手を両手で握った。

こいつ、本当に大丈夫なのか。



「あ、ありがとうございます……」

あいつの声は、セリフを棒読みするロボットのようだった。
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