好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
まさか、本当にほのかに会えると思わなかった。

アイドルになったあいつとは、もう会えなくなるのではないかと思っていた。

俺はクリスマスイブにサンタクロースがプレゼントを持ってくるのを待つ子どものように、カレンダーを眺めてはほのかが来る日まであと何日か数えていた。



ほのかとどこへ行って、何をしようか……
俺は県内のデートスポットをスマホで検索していた。

まだ付き合ってる訳でもないのに、いかにもデートスポットらしい場所にほのかを連れ出すのも気恥ずかしい。

無難に、駅の近くにある大きなショッピングモールにしたほうがよさそうだ。



そこで、ほのかの好きなものでも買ってやればいいんだろうか……

俺は、オーディションの賞金10万円が入っていた封筒を開けて残高を確認する。



そういえば、あいつが出演した映画はもう公開されている。

ショッピングモールの中には、映画館もあった。

あいつが他の男とキスをするところなど見たくはないが、ほのかがどんなふうにキスされたのか、俺は気になって仕方なかった。



初めてのデートに映画は、悪くない選択かもしれない。

俺は、ほのかが出演した映画の前売券を二枚購入した。
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