好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「蒼!」

聞き慣れた声に、顔を上げる。

小走りで改札をすり抜けたあいつは、俺に大きく手を振っている。



ほのかだ……

白いスプリングニットとチェックのミニスカートを身に着けたあいつは、テレビから抜け出したアイドルのようだった。

俺ははやる気持ちを抑え、ほのかに片手を上げて応える。



「久しぶり!元気だった?」

目の前のほのかは、CDのジャケットで見たより幼く見えた。

やはりあれは作りこんだ表情だったのだろう。

無邪気に俺をのぞきこむほのかは、昔と変わらず妹のような存在だった。

あの頃と変わらないほのかを見て、俺は安心した。



「ほのかは全然変わんねぇな」

俺はそんなあいつを見て、思わず目を細めてしまった。
< 58 / 210 >

この作品をシェア

pagetop