好きの代わりにサヨナラを【蒼編】《完》
「そうかな……」

あいつはどこか不満げな顔をしていた。



「じゃ、行こっか?」

あいつは、俺を置いて歩き始める。

何か怒らせるようなことを言ってしまったのだろうか。



『全然変わんねぇな』がマズかったのか……?

ほのかは全然変わっていない訳じゃない。



もともと可愛いあいつは、更に顔つきが引き締まったというか、表情が豊かになったというか、ずいぶん芸能人らしくなっていた。

俺はその外見ではなく、ほのかの内面のことを言ったつもりだったが、それが気にいらなかったのだろうか。



女心はよくわからない……

俺は気を取り直して、パーカーのポケットから映画の前売券を取り出した。
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