エリート副操縦士と愛され独占契約
「ご、ごめんなさい。そうじゃなくて」

「だったら、大人しくついて来いよ」


チッと小さな舌打ちをして、塩野君が再び私に手を伸ばした、その時。


「悪い、塩野。俺が先約」


背後から飄々とした声が聞こえて、私はハッとして振り返った。
名指しされた塩野君も、私を通り越してそちらを見て、目を瞠る。


「え……。水無瀬?」

「お疲れ、塩野。この後、望月、俺と飲みに行く約束なんだ」


私と塩野君の間の微妙な空気に気付かないのか、それとも単に流しているのか。
どっちとも判断しがたい様子で、水無瀬君が屈託ない笑みを浮かべてこっちに歩いてくる。


さっきまではアップバングにセットされていた前髪が崩れ、額に下りている。
ダークブラウンの髪は、彼の歩みに合わせてさらりと揺れる。
予想していた通り、空港内にいるとただの旅客にしか見えないほど、ラフでカジュアルな服装だ。
ブラックデニムにフード付きのパーカー。
ちょっとやんちゃな少年っぽさが、とてもキュートに感じる。


「ついさっきお誘い済みで、俺の方が先約。というわけで、お前は遠慮してくれないか」


どこまでも柔らかい口調で言いながら、水無瀬君が私の肩をグッと掴んだ。
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