打って、守って、恋して。

『藤澤はゲッツーのターンの動きがいいですね。左利きというハンデをものともしていない。相当練習していると思いますよ』

もぞもぞと解説が藤澤さんを褒めてくれていたけれど、実況アナウンサーはすでにテキパキと明日の試合時間などの案内を始めている。

どうやら決勝戦は十八時から放送されるようだ。

今日より遅く始まるというのに、淡口さんが軽い口調で「よし、明日も見るぞ!」と拳を突き上げていた。


テレビからは試合のハイライトが流れ、実況がサクサクと今日の振り返りをしている。合間にベンチが映り込み、熱戦を終えてリラックスした選手たちの表情も見ることができた。

そのどこかに藤澤さんも映らないかなと思ったけれど、彼は一人のチームメイトとさっさと奥へ引っ込んでいってしまった。


─────なんだか、遠い存在になってしまった。

試合に勝ったのはもちろん嬉しいし、彼は確実に勝利に貢献したといえる。
それなのに、どうしてこんなに寂しい気持ちになるのか。

元から遠い存在だったはずなのに。









< 133 / 243 >

この作品をシェア

pagetop