打って、守って、恋して。
晴れてめでたく山館銀行が都市対抗野球の全国大会へ出場することが決まり、無事に私の夏休み申請も会社に通り、実家へ「お盆は帰れない」ということも伝え、なにもなく滞りなく過ぎていく。
東京へ行く手配などは凛子が率先してやってくれていたし、私にできることは、今以上に野球に詳しくなること!
仕事帰りにカフェに立ち寄り、ホットサンドとカフェラテを注文してガラス張りの窓のそばのテーブルにつく。
凛子によると、毎年おこなわれるいくつかの大会でやまぎんはそこそこいい成績をおさめるらしい。それはたしかに会社でも淡口さんが言っていたから分かってはいた。
万が一、全国大会で決勝に行くことになれば、夏休み五日間は社会人野球にすべてを捧げることになる。
合間合間に行きたいところに行こうという凛子の提案もあり、東京には何があるんだ?と改めて携帯で調べようと思ったのだった。
東京に行くことなんかめったにないので、思わぬ凛子の誘いに内心かなりワクワクしていた。
ホットサンドを頬張りながら、携帯で観光スポットや美味しいお店などを調べてメモに書き出していく。
書いているうちに、ほぼほぼ行きたいところがグルメ系であることに気づいた私は、食い意地のすごさに自分で呆れ返った。
ある程度書き出して満足し、軽食も済ませてのんびりカフェラテを飲む。
金曜日のせいか、人通りが多い。
ほとんど無意識に、携帯で検索したのは「藤澤旭」という名前だった。
何度見ても、ごくごく普通の人。
でも、社会人野球の日本代表になるくらいすごい人。
そんな人が、山館銀行の窓口に立っていると思うと不思議でならない。
まさか私がこの人のファンになって、野球に詳しくなるなんて、ね。