Break

「お待たせいたしました。ウィスキーサワーでございます。…お兄さんはよろしいですか?」


グラスを両手で遊ばせている彼の手元に、バーテンダーが視線を向ける。


「ん…ブルーラグーンで」

「かしこまりました」


彼が話し出さないのならと、こちらから切り出そうとしたとき、不意に彼の携帯が震えた。

薄暗い店のなかで切羽詰まった顔がほの明るく照らし出される。


「ごめん。ちょっと待ってて。すぐ戻る」


慌てた様子で携帯を握りしめ、足早に店を出ていった。

何か仕事のトラブルでもあったんだろうか。

もしそうならば、今夜、彼が再びわたしの隣に座ることはない。

零れ落ちそうなため息を、爽やかなレモンの香りと共に流し込む。
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