死にたい君に夏の春を
スライドしていくと、ある日から写真は別のものを写すようになった。
8月10日、僕が九条と出会う4日前だ。
このビルの部屋の写真。
今ほど生活感はなく、ただの廃墟という印象だ。
ホコリだらけで、とても人の住めるような場所ではない。
その次の日は、潰された虫の死骸だった。
そして次は烏の死骸。
魚の死骸、雀の死骸、猫の死骸。
全部、九条が撮ったのだろう。
不安定な心理状況の中、どういう気持ちで死骸を撮り続けていたのか。
僕は、想像もしたくない。
しかしその死骸も、ある日からぱったり撮られなくなった。
8月16日、僕がゲームセンターで九条を見つけた日。
そして、彼女をもっと知りたいと思った日。
死骸ではなく、綺麗な向日葵の写真だった。
夕焼けに照らされた向日葵は多少ブレていて見にくいが、これだけでも九条の心情が変わったんだとわかる。
それからは、屋上からの満天の星空や生きた猫、煌めく川の写真が入っていた。
そして、僕の無防備な寝顔も。
九条は僕と出会って、確実に変わったんだ。
心も体も傷だらけで、死骸を撮ることしか満たされなかった彼女は、青春を知ることが出来た。
それだけで、僕は救われた。
8月10日、僕が九条と出会う4日前だ。
このビルの部屋の写真。
今ほど生活感はなく、ただの廃墟という印象だ。
ホコリだらけで、とても人の住めるような場所ではない。
その次の日は、潰された虫の死骸だった。
そして次は烏の死骸。
魚の死骸、雀の死骸、猫の死骸。
全部、九条が撮ったのだろう。
不安定な心理状況の中、どういう気持ちで死骸を撮り続けていたのか。
僕は、想像もしたくない。
しかしその死骸も、ある日からぱったり撮られなくなった。
8月16日、僕がゲームセンターで九条を見つけた日。
そして、彼女をもっと知りたいと思った日。
死骸ではなく、綺麗な向日葵の写真だった。
夕焼けに照らされた向日葵は多少ブレていて見にくいが、これだけでも九条の心情が変わったんだとわかる。
それからは、屋上からの満天の星空や生きた猫、煌めく川の写真が入っていた。
そして、僕の無防備な寝顔も。
九条は僕と出会って、確実に変わったんだ。
心も体も傷だらけで、死骸を撮ることしか満たされなかった彼女は、青春を知ることが出来た。
それだけで、僕は救われた。