死にたい君に夏の春を
体が痛いとか、手遅れかもしれないとか言っている場合ではない。


たとえ助けられなくても、僕は彼女の元に行きたい。


連れ去ったあの男をこの手で殺すまで、絶対に諦めない。


僕は、学校に行った時盗んだ紙のことを思い出した。


万が一、九条になにかあったらと思って盗んだ連絡網。


もしあの男が九条の父親ならば、居場所がわかるかもしれない。


痛みを我慢し重い体を起こす。


そして近くにあったタオルで右腕の止血をした。


足元には、拳銃が落ちている。


初めて拳銃を見た時は、ちゃんと弾倉に弾が入っていた。


僕は逆さになった銀色の缶を退かす。


そこには、5つほど弾が入った小さな袋があった。


九条はあらかじめ抜き取っていたのか。


弾を拳銃に入れ、ズボンの隙間に挟む。


部屋の隅にあった鉄パイプを持って、僕は部屋を出た。


絶対に、見つけ出して助ける。


そしてあいつを、殺してやる。
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