死にたい君に夏の春を
帰りの方向をわからず、ただ一心不乱に走る。


曲がり角を何度もまがりながら。


全力で走っていたはずなのに、いつの間にか九条に通り越されていた。


さすが逃げ足が速いと言うべきなのか、ただ単に僕が遅いのか。


どちらも理由としてありそうだ。


そんなことを、九条の後ろ姿を見ながら思う。


そして辿り着いたのは、見たことも無い小さな公園だった。


ブランコしかない、静かで小さな公園。


「はぁ、はぁ……。に、逃げ切った?」


僕は後ろを振り返る。


だが九条と僕以外、ここには誰もいない。


彼女は荒い息の中、言った。


「はぁ……。そうみたい」


そして2人、顔を上げて目を合わせる。


「ふ、ふふ」


その小さな口から、声がこぼれた。
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