死にたい君に夏の春を


15分ほど歩いたところに、僕達の通う中学校がある。


生徒数が段々増えてきて、去年新しい校舎が出来たばかりの学校だ。


さすがに夜は誰もいないようで、いつも明るいはずの教室の窓も真っ暗である。


校門は当然のように閉まっていて入れなくなっていた。


僕は言った。


「どうする?」


迷わず、九条は。


「選択肢は1つ、でしょ」


そう言って、門を登り始めた。


意外と高いはずなのに、彼女は軽々とその門を乗り越えてしまった。


「運動不得意な高階くんは登れるー?」


くそ、煽ることを覚えやがって。


財布を盗んで走ったあの日、僕が運動が苦手なことをわかっていたのか。


ムキになって。


「こんなの楽勝だって」


そう言って、僕の身長ぐらいの門をよじ登る。
< 61 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop