死にたい君に夏の春を
15分ほど歩いたところに、僕達の通う中学校がある。
生徒数が段々増えてきて、去年新しい校舎が出来たばかりの学校だ。
さすがに夜は誰もいないようで、いつも明るいはずの教室の窓も真っ暗である。
校門は当然のように閉まっていて入れなくなっていた。
僕は言った。
「どうする?」
迷わず、九条は。
「選択肢は1つ、でしょ」
そう言って、門を登り始めた。
意外と高いはずなのに、彼女は軽々とその門を乗り越えてしまった。
「運動不得意な高階くんは登れるー?」
くそ、煽ることを覚えやがって。
財布を盗んで走ったあの日、僕が運動が苦手なことをわかっていたのか。
ムキになって。
「こんなの楽勝だって」
そう言って、僕の身長ぐらいの門をよじ登る。