死にたい君に夏の春を
少し漁ってから、九条は言う。


「なんか、思ったよりつまんないね」


「そう?」


「私あんまり学校来ないから、極秘情報とかあってもそんなに興味ないや」


確かに九条からすれば、テストの回答や生徒の情報なんて必要ないのだろう。


あまり入らない職員室に来ればなにか面白いものがあるかと思ったか、そうでもなかったらしい。


僕は少し考えて。


「じゃあ教室行ってみる?そろそろ警備員も上の階に行ってるだろうし」


「そうだね」


そうして僕らは職員室を出て、またピッキングで扉の鍵を閉めた。


一応周りを警戒する。


こんなに静かだったら、大きな音を立てれば階が違くても警備員に気づかれてしまうかもしれない。


彼女は小声で言う。


「……正面階段じゃない方から行こう」


職員室の近くにある、狭い階段に向かう。


そして足音を立てずに、階段を上った。


窓がないぶん廊下よりさらに暗くて、懐中電灯がなければ歩けないぐらいだ。


慎重に手すりを伝って、1段ずつ上っていく。


2階まで着いたところで、辺りを見回す。


「いないみたいだね」


そう言って僕はほっとする。


「気づかれないうちにさっさと行こ」


九条が先行して、教室に向かった。
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