死にたい君に夏の春を
そんな似合わない僕の言葉を無視して、彼女はすぐ近寄って来た。


「何キモいこと言ってんの!」


キモイなんて、九条にも言われてしまった。


怖い顔をした警備員がどんどん近づいてくる。


「で、でも、捕まったらお前は……」


捕まってしまったら、きっと彼女は父親の所へ強制的に帰されてしまうだろう。


そして、想像できないほどの仕打ちを受けるに違いない。


もう二度と、会えないかもしれない。


そんなの、僕が嫌だ。


「うっさい!」


有無を言わさず彼女は肩に僕の腕を回して、引きずるように歩き出す。


「高階くんがいなきゃ、青春の意味ないじゃん!」


そうか、僕の存在に意味なんてあったのか。


1度もそんな風に思われたこと、なかったのに。


自分の価値、それは九条とともに青春を探すこと。


ならば、こんな所で捕まる訳には行かない。


僕は、地面の砂を握りしめて。


「……くらえ!!」


迫り来る警備員に向かって投げた。


「いっ……!」


警備員はとっさに顔を覆い隠すが、どうやら目に砂が入ったようで痛そうにもがき苦しんでいる。


九条は僕の行動に驚きながらも、肩で支えながら二人三脚で校門に向かう。
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