死にたい君に夏の春を
足首の捻挫の痛みと、手と膝の擦り傷の痛みを忘れるほど逃げることに夢中になる。


遠くの方で警備員が必死で何か言っているが、全く聞こえない。


そして僕らは閉まった校門までつき、よじ登る。


焦っていたから登るのは来た時より苦労したが、九条が手を差し伸べてくれたおかげで、楽に降りることが出来た。


こんな時、彼女はとても頼りになる。


でも、同時に僕が情けない気持ちになるから、素直に喜べない気がする。


そう言いながらも、彼女に体を預けているとなんだか安心する。


九条がヒーローで、僕がヒロインになった気分だ。


ふと、ぶかぶかのセーラー服を着ているからわからなかったが、触ると折れそうなくらい肩が細いことに気づいた。


こんな細い体のどこに、僕を支えられるだけの力があるのだろう。


暗い夜道を走りながら、そう思っていた。
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