死にたい君に夏の春を
もはや寝ることを諦めた僕は、ふと窓の外を眺めた。
月の光が微かに部屋の中に入る。
決して明るくない、微々たるもの。
僕はここ数日間のことを、脳裏に浮かんだ。
九条と出会ったあの日の夜。
そこから僕の平凡な毎日は、いとも簡単に崩されたのだ。
刺激なんていらない、ただ平穏に生きていればそれでいい。
そんな風に考えていた。
だが知ろうとしないことは所詮知らないまま。
刺激的という言葉の意味すらわからなかった僕は、ただ自分が変わってしまうのを恐れていただけだった。
九条に出会い恐れることを忘れた僕は、母のようにこの人生を自由に生きようとした。
自ら刺激を求めた母は、一体どんな人生を送ったのだろうか。
今の僕のように楽しかったのだろうか。
窃盗と不法侵入をする僕と、浮気を繰り返す母親。
やはり子は親に似るものなのだと実感する。
母のことなんてなんにも知らないくせに、そんなことを思う。