死にたい君に夏の春を
何時間も考え込んでいると、脳が疲れてきた。
だんだん瞼が重くなってくる。
やっと寝られそうになったその時、隣から九条の声が聞こえた。
「う……うぅ……」
嗚咽のようなその寝言。
とても苦しそうで、泣いているようだった。
激しい歯ぎしりとともに、呼吸も荒くなってくる。
そして、とてもか細い声で。
「……たすけて」
そう言った。
たすけて。
そのたった4文字に、彼女の今までの苦悩と痛みが込められている。
いじめのことは、学校で全て吐き出したように見えた。
だが彼女には、まだ父親という最大の敵がいる。
毎晩毎晩、殺される恐怖を味わいながら寝ていたと思うと、胸が苦しくなる。
同じ部屋で寝ることを強要したがっていたのは、1人が嫌だったからなのか。
かわいそう、なんてもんじゃない。
こんな彼女を、僕が助けてあげられるだろうか。
手を目一杯九条の方へ伸ばす。
今ここで頭を撫でてあげられたらよかったのに。
僕らの距離は、あまりにも遠すぎた。