死にたい君に夏の春を


さっきよりも早く、足の痛みなんて気にせず走る。


昨日楽しかった分、父親に会ったことで一気に現実へ引き戻された感覚だ。


会えば会うほど嫌いになってくる。


もう考えたくないと思い無心になっていたら、いつの間にか廃墟のビルにまで着いていた。


3階まで駆け上がり、部屋に入る。


床のダンボールにはちゃんと九条が大人しく寝ていた。


あんなに自分は大丈夫だと言っていたのに、気絶したように爆睡している。


そっと額に手を当てる。


そこまで高熱ではないが、多分熱中症も含まれているだろう。


僕は持ってきた氷をビニール袋に詰め、タオルで包む。


それを4つほど作って、首周りや足の付け根、脇などに置いた。


保健の授業で習った内容だ。


ただテストのために覚えていただけだが、いざと言う時に役立ってよかった。


苦しそうだった九条は、心なしか穏やかな表情になった気がする。


とりあえず熱さは防いだから、次はコンビニで栄養のあるものを買おう。


そう思って立ち上がると、ふと左半身だけ重くなる。
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