死にたい君に夏の春を
2階から降りてきたのは、2人の男女。


1人は織部 誠で、喋りかけてきたもう1人は、九条いじめの主犯格、樹 梨央。


2人は手を繋いでいたが、僕に気づかれて離した。


「なにそれ、チョーカー?やば、あんたそういう趣味あんの?」


虫唾が走る。


見ただけで勝手に判断するなよ。


「おい、空気読めって。きっと彼女だろ」


織部は小声で樹に話しかけるが、全部丸聞こえである。


空気読まなくていいし、彼女でもない。


思考を巡らせる。


こんな時どうすればいいのだろうか。


咄嗟に思いついたのが。


「母親が、誕生日だから」


さすがにバレるだろうか。


他にいなかったとはいえ、母親を言い訳になんか使いたくなかった。


「ふーん」


樹は疑うような目で見てくる。


しかしすぐに。


「そういうのより、こんなネックレスの方がいいんじゃない?」


納得したように、別のものを勧める。


よかった、乗り切った。


苦しい言い訳のように思えたが、馬鹿で助かった。


「いや、これでいい。お金ないから」


そう言って会計を済ませ、黙って店を出ていこうとする。


「あ、高階。樹といたところ、誰にも言わないでおいてくれない?」


言うつもりもないし、そもそも2人が交際していることは既にみんな知っている。


「はいはい」


なんて適当な返事をして、外へ出た。
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