大江戸シンデレラ

納戸に戻ってきた美鶴は、表で買い求めたお(さい)を板敷の床の上に並べた。

棒手振りからもらった箸を手にする。

まずは、貝の剥き身と切り干し大根の煮物を(つま)み上げる。

そして、それがもう少しで口の中に入る、と思ったその刹那——

縁側の廊下の向こうから、あわただしい物音が聞こえてきた。

思ったよりずっと早く近づいてくる。


——お菜を隠す暇など、なかった。

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