大江戸シンデレラ

美鶴がさように思った矢先……

「わたくしを真似(まね)て云うてみよ」

不意に、刀根は告げた。


いきなりのことに驚いた美鶴は、頭を上げた。

刀根の顔を、不躾(ぶしつけ)なまでにまじまじと見る。

年齢相応の面立(おもだ)ちの(いかめ)しい老女だった。
当然のことながら、取り立てて美しいというわけではない。

されども、一本筋の通った矜持のごときものが、その面差(おもざ)しにはあった。

残念なことに、島村の家の多喜には見られぬものであった。

——かような(ひと)が……
武家の女子(おなご)というものでありんしょう。

美鶴はしみじみと感じ入った。


その反面——

今は亡き師匠を思い起こさせもした。
初めて舞を習った、芸妓上がりの老女だ。

ほんの少しでも舞の振りを間違えようものなら、手どころか物差しまでも飛んできた、激しい気性のお師匠(ししょ)さんだった。

まったく異なる身分であるし、目の前の武家の女が激しい気性かどうかはともかく、とても手や物差しを使うようには見えない。

それでも、相対(あいたい)した者が思わず背筋をぴんと伸ばしてしまう(たたず)まいなど、美鶴には何故(なぜ)か二人は似ているように思えた。

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