大江戸シンデレラ
「島村の家から参った美鶴と申しまする」
早速、刀根が「口立て」する。
「し…島村の家から参った美鶴と申しまする」
美鶴はその口振りをなぞった。
「何卒、よろしくお願い奉りまする」
「な…何卒、よろしくお願い…奉りまする」
「続けて云うてみよ」
すかさず、次の「お題」が出る。
「……島村の家から参った…美鶴と申しまする。何卒…よろしくお願い…奉りまする」
ややもすれば、舌を噛んでしまいそうなたどたどしさではあるが、なんとか云えた。
「まずは、『物云い』からであろうな。
そなた、明日から毎日、当家へ来られたし」
——ま、毎日で……なんしかえ。
「そなた、口はござらぬのか」
刀根から、じろりと睨まれる。
美鶴は、はっと我に返った。
「あ…ありがとうございまする。
何卒、よろしくお願い…奉りまする」
ほんの少しだけ、たどたどしさが薄れていた。