大江戸シンデレラ

すると、縁側の方から人の気配がした。

先刻(さっき)の女中が針箱を持ってきたのだと察した美鶴は、座敷の外を見た。

そのとき、声がした。


「……松波様の奥方様」

——その声は、もしや……


着流しに黒羽織の長身の男が、縁側に立っていた。

切れ長の目にスッと鼻筋が通っていて、ちょっと薄めの唇。(かしら)は粋な本多(まげ)
腰には長刀・短刀を二本差ししている。

美鶴はその武家の男を見つめた。


果たして、その男は広次郎であった。

< 323 / 460 >

この作品をシェア

pagetop