大江戸シンデレラ
すると、縁側の方から人の気配がした。
先刻の女中が針箱を持ってきたのだと察した美鶴は、座敷の外を見た。
そのとき、声がした。
「……松波様の奥方様」
——その声は、もしや……
着流しに黒羽織の長身の男が、縁側に立っていた。
切れ長の目にスッと鼻筋が通っていて、ちょっと薄めの唇。頭は粋な本多髷。
腰には長刀・短刀を二本差ししている。
美鶴はその武家の男を見つめた。
果たして、その男は広次郎であった。