停留所で一休み
「無理ないですよ。俺、学生の時は勉強ばっかりしているような地味なヤツでしたから…」

「そう。」

あいつが、微笑んでいるのが分かる。

「逆に出海さんは、勉強、スポーツ、行事の委員会とか、何やっても目立っていましたよ。」

「あら。」

「そんな彼女が、俺の存在に気づかないのも、当り前っていえば当たり前なんです。」

本村君は話している最中も、ずっとこっちを見ているような気がした。

「もしかしたら、俺……」

「ええ。」

「出海さんの目に少しでも映りたくて……今まで頑張ってきたのかもしれません……」

母が何も言わずに、廊下を立ち去ったのが分かった。

残されたあいつは、ずっと私の方を見ている。
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