停留所で一休み
「言っとくけど、俺は何度も言おうとしたぜ?」

「私が聞かなかったって言うの?」

「その通り。」

がっかりする私を見て、あいつはまた一歩、私に近づいた。

「そんなに落ち込まないでくれる?」

「だって…」

「そんなに、俺の事が嫌い?」

いつもは冗談で返せるのに、耳元で言われるとドキッとする。

「嫌いじゃ……ないよ。」

「それならいいけど。」

ほっとしているあいつを見て、またドキドキしている。


「本村君は……どうしてこの会社に来たの?」

あいつは、口をあんぐり開けている。

「おまえ、部長が言ったこと、聞いてなかったのか?」

「えっ?」

照れながらあいつは、答えた。
< 223 / 224 >

この作品をシェア

pagetop