キンヨウビノヒミツ+彼女が忘れた金曜日+
***

「見事に寝に帰ってくるだけの家だね」

 それが、井上が発した俺の家への感想だったし、自分でもまさしくその通りだとも思う。平日は仕事が終わったら疲れてるから寝るだけだし、休日もゲームでもやっていれば終わってしまう。そんな程度だ。

 それでも、一人で暮らすのには全く困らないし、もちろん2人で飲むのにだって何も困りはしない。

「ねーねー、前橋君。あれ読んでもいい?」

 あれ、と井上が指したのは、紙袋に実に90冊も詰められた漫画本。

「あー、いいよ」

 やった!と小さな歓声を上げて本に手を伸ばした井上に向かって続ける。

「栄さんのだけど」

「えー……じゃあいいデス」

「なんで?」

「呪われそうじゃん」

 呪われんのかい。

 栄さんって言った途端にあからさまにテンションが下がって面白いな、井上。
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