あり得ない男と、あり得ない結末


「起きろよ、美麗」

そんな声に目を開けると、目の前に阿賀野さんがいた。
彼は朝風呂から戻って来たばかりらしく、Tシャツから伸びた腕からはうっすら湯気が上がっている。
タオルを髪にごしごしこすりつけながら、私のおでこをつついている。

「髪……濡れてますよ」

「放っておけば乾くし」

「阿賀野さん、いつもそうなんですか?」

「ドライヤーはしないかな」

意外。そのくしゃっとした髪は、おしゃれでやっているんだと思っていた。

「ところで美麗。なかなかいい眺めだから言いたくないけど。あんまり無防備にされても襲っちゃうぞ」

「へ?」

私は布団を抱き込むようにして寝ていた。浴衣も中にTシャツを着こんでいるとはいえ乱れている。
「あ、すみません」と胸元を押さえると、「あー違う違う」と言われた。

「足」

「え?」

浴衣がめくりあがっていて、ふくらはぎから下がむき出しの状態で布団から見えている。
でも足ならそんなに……と思ったけれど、意外にも阿賀野さんの視線は足先にくぎ付けだ。
脚フェチなのかしら。

半身を起こし、改めて、「おはようございます」とあいさつすると、ようやく視線を外してくれた。
耳がちょっと赤くて、この人こういうとこで照れるのかと思うとすごく不思議な気分。
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