ハイスペックなイケメン部長はオタク女子に夢中(完)
15.コンペ当日

イラスト仲間に教えてもらいながら、中村からもらった膨大な写真データと自分で描いたイラストとをコラボさせ、何とか竜二の言う「サブカルチャーと伝統文化の融合」を試みた結果、思いの外、あやめ的には満足のいく仕上がりのものが出来た。こういう写真とのコラボはありだなー、と思いながらコンペ当日を迎えた。

コンペ会場の大会議室に入ると、出品者は8名だけだった。デザイン企画以外からの参加は、企画営業の3名とあやめだけで、あやめは、完全に場違いな所に来てしまったと、今になって後悔した。くじを引き、あやめの順番は4番目になった。一人目のデザイン企画の人のプレゼンを聞きながら、本当にあやめはブルーな気持ちになった。なんでコンペに出すことになったのか、村川課長の一言だったが、他の課からも全然人が出ていないなら、途中で投げ出せば良かった…と思いながら、躍動感のあるホームページを見て、すごいなー、やっぱプロは違うよなーと他人事の様に思った。あやめの前が企画営業の倉本だった。同じ女性でありながら、営業でバリバリ活躍する憧れのキャリアウーマンという感じだ。身長もそこそこあり、スラッとした体型にぱっちりとした二重の目。スッと伸びた鼻筋に、ぷっくらとしたキレイな口。イラストから出てきたと言ってもおかしくない美人だが、それを全く鼻にかけていない柔らかな雰囲気が伝わってくる。世の中って不公平だなーと思いながら、倉本のプレゼンを見た。オシャレなイタリアンレストランが題材で、ホントにおしゃれ過ぎるが、ホームページ自体は、すごくシンプルなもので、このイタリアン行ってみたいなーとあやめは思った。いよいよあやめの番になり、ガチガチに緊張しながら、プレゼンを始めた。トップページをスクリーンに映すと、室内の雰囲気が少し変わった気がした。戸惑いながらもぎこちない説明を続け、何となく、異様な雰囲気を感じながら拙いプレゼンを終えた。自分の番が終わり、ほっとすると、後の人のプレゼンはすごく気楽に楽しんで見ることができ、自分の会社はこういうことをする会社なんだなーとあやめは少し誇りに思えてきた。全員のプレゼンが終わると、それぞれに対するコメントが始まった。やはり、デザイン企画のメンバーには厳しいダメ出しが続き、あやめはこんなつまらないものを出してと怒られるのじゃないかと心配になった。北見が企画営業の倉本に対しても強めのダメ出しをしたことで、あやめは本当にビビってしまったが、隣の倉本は、姿勢を崩さず、ハキハキと受け答えをしていて、本当にかっこ良かった。最後には北見も笑ってコメントをしていて、やっぱり倉本はすごい人だな、とあやめは思った。あやめのコメントになり、緊張していると、

「四人目の、吉田さん。デザインの経験はないって言ってたけど、イラストは自分で描いたの?」と北見部長が聞いた。あやめは

「あ、はい。こういうイラストだったら自分で描けるので」と答えると、

「イラストはどこかで勉強したことあるの?」と北見が聞いた。

「いえ、趣味で自分で描いてたぐらいです」とあやめが答えた。北見は

「一言で正直な感想を言うと、驚きしかない。店舗の写真とイラストのミスマッチ感、技術的な粗さは素人らしいが、アイデアは面白いと思う。ただ、今はやっぱり驚きが大きい。」と北見が言った。あやめはどう受け取れば良いのかわからず、困惑していると、

「君がこのコンペに出てくれて本当に良かった。ありがとう。」と北見は言った。あやめは、よくわからないが、出て良かったと言ってもらえてホッとした。
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