ハイスペックなイケメン部長はオタク女子に夢中(完)
19.オタク仲間の会合

再び目が覚めると、外は随分明るくなっている気配がした。目の前にある他人の身体にぎょっとしながら、今の状況を思い出して、そっと様子を伺うと、北見はまだぐっすり眠っている様子だった。起こさないようにそっとベッドから抜け出し、ドアの近くに置いてあったコートと鞄を持つと、静かに急いで部屋を出た。広いリビングに圧倒されながら、鞄から手帳を出し、迷惑をかけたお詫びの言葉をメモに残して玄関を出た。

週明け、複雑な気持ちを抱えたまま仕事に向かったが、特に北見との接触は無く、あやめはホッとした。水曜の夜、ひさびさにイラスト仲間4人で集まることになった。いつものように駅近くの2階にある個室の居酒屋で、近況を報告しあい、お互いの作品をタブレットで見せあったりしながら、駅前を行き交う人々を観察し、好き勝手な妄想をして、話を広げるというのがあやめたちの定番だった。あやめがコンペにだしたことは皆既に知っていたので、出来上がったホームページを見せ、

「ウオー、いいじゃん。こういうの。何か私たちの趣味が活用されてるって感じ。」と褒めてもらい、あやめも嬉しかった。写真とのコラボをもっとしてみたいというあやめの意見に、

「使ってもらう作品を生み出すなら考えていくべきことだね」とフリーのイラストレーターとして活躍している神田早希が言った。

「やっぱりそういうものなんだね、かんちゃん。何かさ、正直今まで完全趣味で自分の好きなものを好きなように描くってことしかしてこなかったから、なんか題材決めてやるとか、写真とのコラボって新鮮でさ。」とあやめが言うと、

「そうやって思えるってことは、多分あーちゃんはこっちを本業にしてもやっていけると思うけどなー。」と神田が言った。あやめは

「いやー、それはムリだよ。私にはかんちゃんみたいなずば抜けた才能も技術もないもん」と言った。そんなことないよという慰めをもらっていると、突然

「うわー、ちょっと見て見て。あの二人やばくない?」と窓の外を指して一人が言った。指された方を見ると、確かにかなりのイケメン二人が立っている。イラスト素材にも、妄想材料にも最適なイケメン具合で、早速4人で好き勝手な妄想が始まった。

「あれってナンパ待ちかなー?」

「ってか、逆ナン待ち?」

「いや、彼女でも待ってんじゃないの?」

「えー、もうちょっと夢見させてよー。職業なんだろうね?」

「サラリーマンっぽくはないよね。」

「えーでも、スーツ着せたい。」

「確かにー。右側が社長で左側が有能な秘書みたいな。」

「やー、でもそれはさすがに出来過ぎだよー。」

「モデルとかかなー?」

「そうかもねー。って、あ、待ち人来るって感じじゃない?」

「なんだ。やっぱり彼女持ちか。」

「…なにこれー。やっぱりイケメンには美人がつくって事?」

「うわー、たしかにあの子かわいいし、もうひとりも美人だわ。」

「っっえっ。えーーーーーーーーーーーーーーーー。」とひときわ大きな声を出したあやめに皆がぎょっとして振り返ると

「あれ、倉本さん…」と呟いた。知り合い?と聞かれ、同僚だと言うと、周りはギャーギャー喚いた。いいなー、羨ましい。あんな美人な同僚って、どんな人?と興味津々だ。あやめも交流があるわけではないが、営業で仕事熱心で男っ気は全然ないという噂だったことを思い出しながら、四人の様子を伺った。あきらかに「秘書」ともう一人の小柄な可愛い女性はラブラブなカップルで、「社長」と倉本がカップルのようだった。一瞬北見の顔を思い浮かべて、あやめは、残念、北見部長、倉本さんにはあなたよりも素敵な彼氏がいます。と心の中で思った。
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