ハイスペックなイケメン部長はオタク女子に夢中(完)
8.おじいちゃまと竜ちゃん
一階へ降りると不穏な空気が流れていた。どうも予想以上に早い時間に祖父が来店したらしく、勝手にお茶会の準備を進めている様子に激怒しているようだ。店先で大声で口論をしている二人に従業員もお客様も驚いた表情で戸惑っている。あやめは急いで草履を履いて店先へ出て行き、
「おじいちゃま、竜ちゃん、お客様がいらっしゃるのにこんな店先で何事ですか!喧嘩するなら他所でしてください。」と二人を嗜めた。突然現れた着物姿のあやめに祖父は驚き、竜二は頭に血が上っていた自分に気がついたようで、自分の居場所を思い出しあたふたし始めた。あやめは
「皆様、お騒がせ致しまして、大変失礼いたしました。よろしければ、改装致しました奥のお披露目を兼ねまして、皆様にお煎茶を準備させて頂きます。」と居合わせた客に頭を下げ、
「おじいちゃま、よろしいですね?」と祖父に向いて言った。面食らったような顔をした祖父に、耳元で
「ごめんなさい、おじいちゃま。本当はおじいちゃまに一番にあそこでお点前を披露したかったんだけど。」と囁くと、祖父は破顔して、
「お客様、声を荒げまして大変失礼いたしました。孫が私へのサプライズを企画しとったようです。さぁさぁ、どうぞ奥で一杯お召し上がり下さい。」と客を案内し始めた。奥の土間から様子を伺っていた恭子が引き戸をめいいっぱい開け、
「どうぞこちらです。」と案内をし、客たちは戸惑いながらも土間へと入り、それぞれに感嘆の声を上げた。
竜二は恭子の指示で大急ぎで湯呑みを準備し、恭子は急須に来客用の煎茶を入れ準備した。あやめが客にお茶を配って回っていると、祖父は中庭の奥の和傘の下で着物を着たダンディな同年代の男性客と二人で話し込んでいた。他の客たちにお茶を配り終え、祖父たちの元へお茶を運ぶと、
「孫のあやめだ。今回はまんまとこいつに乗せられた。」と客人に紹介した。あやめは頭を下げて、
「おじいちゃま、そんなひどいことおっしゃらないで。私は、てっきりもうおじいちゃまの了解を得ているものだとばかり思って、今日来たんですから。」とあやめが言うと、苦虫を噛み潰したような顔をし、
「ホントに竜二の強引さは一体誰に似たんだか」と祖父が言った。客人は祖父の言葉に大きな声で笑いだし、
「アンタの息子だからなー。強引なのは遺伝だ。二人共似た者同士だからぶつかるんだろう。」と言った。あやめも全くその通りだと思いつつ、
「でも、竜ちゃんは本当にやり方が稚すぎるわ。おじいちゃまも確かに強引な所はあるけど、もっとスマートに物事を進めるのに、どうしてそこは遺伝しなかったのかしら。」と呟いた。客人は嬉しそうな顔をして、
「そりゃー年齢と共に学習したんだよ。昔はほんと、今の竜二みたいに危なっかしかったさ」と笑った。祖父は、複雑な表情をしながらも身に覚えがあるのか苦笑をしていた。話し方から祖父の昔からの友人なのだろうとあやめは思った。
「にしても、こんな立派な孫が居たなんてちっとも知らなかったよ。」と客人が言うと、
「さくらの娘だ。こっちには中々来ないからな。」と祖父が答えた。
「あぁ、さくらちゃんの娘さんか。道理でべっぴんさんだ。」と客人は言った。あやめが、
「母をご存知なのですか?」と聞くと、
「そりゃー、この界隈でさくらちゃんを知らない人はいないよ。うちにもよく遊びに来てくれてたし。」と答えた。聞くと、客人は白石さんと言い、母が通っていたお茶の先生のお宅の方で、白石さんの奥様が母に稽古をつけていたようで、今現在も、奥様とご子息とでお茶の教室を開いていて、ここのお菓子をお稽古にも使っている常連さんだそうだ。あやめが
「ここでお茶会のようなものが出来たら良いと思うんだけど。」と呟くと、祖父は
「お茶会はそんな簡単なもんじゃない。」と言った。あやめは
「もちろん、わかってるけど、きちんとしたお茶会は白石さんのところでされてるだろうから、もう少し広く、全然お茶のこと知らない人にも気軽に楽しんでもらえるような会が出来たら素敵じゃない?例えば外国人観光客とかは、正座って難しいでしょ?でもここなら椅子だし、気軽にお茶もお菓子も楽しんでもらえるんじゃないかな?って思うの。」と祖父に言った。祖父はまだ納得いかない様子だが、白石は
「いいじゃないか。それで門戸が広がるっていうのは。現状維持も大事だが、せっかくこんな空間を作ったんだから、利用しないと勿体無い。ウチのにも話してみるよ。」と言ってくれた。
一階へ降りると不穏な空気が流れていた。どうも予想以上に早い時間に祖父が来店したらしく、勝手にお茶会の準備を進めている様子に激怒しているようだ。店先で大声で口論をしている二人に従業員もお客様も驚いた表情で戸惑っている。あやめは急いで草履を履いて店先へ出て行き、
「おじいちゃま、竜ちゃん、お客様がいらっしゃるのにこんな店先で何事ですか!喧嘩するなら他所でしてください。」と二人を嗜めた。突然現れた着物姿のあやめに祖父は驚き、竜二は頭に血が上っていた自分に気がついたようで、自分の居場所を思い出しあたふたし始めた。あやめは
「皆様、お騒がせ致しまして、大変失礼いたしました。よろしければ、改装致しました奥のお披露目を兼ねまして、皆様にお煎茶を準備させて頂きます。」と居合わせた客に頭を下げ、
「おじいちゃま、よろしいですね?」と祖父に向いて言った。面食らったような顔をした祖父に、耳元で
「ごめんなさい、おじいちゃま。本当はおじいちゃまに一番にあそこでお点前を披露したかったんだけど。」と囁くと、祖父は破顔して、
「お客様、声を荒げまして大変失礼いたしました。孫が私へのサプライズを企画しとったようです。さぁさぁ、どうぞ奥で一杯お召し上がり下さい。」と客を案内し始めた。奥の土間から様子を伺っていた恭子が引き戸をめいいっぱい開け、
「どうぞこちらです。」と案内をし、客たちは戸惑いながらも土間へと入り、それぞれに感嘆の声を上げた。
竜二は恭子の指示で大急ぎで湯呑みを準備し、恭子は急須に来客用の煎茶を入れ準備した。あやめが客にお茶を配って回っていると、祖父は中庭の奥の和傘の下で着物を着たダンディな同年代の男性客と二人で話し込んでいた。他の客たちにお茶を配り終え、祖父たちの元へお茶を運ぶと、
「孫のあやめだ。今回はまんまとこいつに乗せられた。」と客人に紹介した。あやめは頭を下げて、
「おじいちゃま、そんなひどいことおっしゃらないで。私は、てっきりもうおじいちゃまの了解を得ているものだとばかり思って、今日来たんですから。」とあやめが言うと、苦虫を噛み潰したような顔をし、
「ホントに竜二の強引さは一体誰に似たんだか」と祖父が言った。客人は祖父の言葉に大きな声で笑いだし、
「アンタの息子だからなー。強引なのは遺伝だ。二人共似た者同士だからぶつかるんだろう。」と言った。あやめも全くその通りだと思いつつ、
「でも、竜ちゃんは本当にやり方が稚すぎるわ。おじいちゃまも確かに強引な所はあるけど、もっとスマートに物事を進めるのに、どうしてそこは遺伝しなかったのかしら。」と呟いた。客人は嬉しそうな顔をして、
「そりゃー年齢と共に学習したんだよ。昔はほんと、今の竜二みたいに危なっかしかったさ」と笑った。祖父は、複雑な表情をしながらも身に覚えがあるのか苦笑をしていた。話し方から祖父の昔からの友人なのだろうとあやめは思った。
「にしても、こんな立派な孫が居たなんてちっとも知らなかったよ。」と客人が言うと、
「さくらの娘だ。こっちには中々来ないからな。」と祖父が答えた。
「あぁ、さくらちゃんの娘さんか。道理でべっぴんさんだ。」と客人は言った。あやめが、
「母をご存知なのですか?」と聞くと、
「そりゃー、この界隈でさくらちゃんを知らない人はいないよ。うちにもよく遊びに来てくれてたし。」と答えた。聞くと、客人は白石さんと言い、母が通っていたお茶の先生のお宅の方で、白石さんの奥様が母に稽古をつけていたようで、今現在も、奥様とご子息とでお茶の教室を開いていて、ここのお菓子をお稽古にも使っている常連さんだそうだ。あやめが
「ここでお茶会のようなものが出来たら良いと思うんだけど。」と呟くと、祖父は
「お茶会はそんな簡単なもんじゃない。」と言った。あやめは
「もちろん、わかってるけど、きちんとしたお茶会は白石さんのところでされてるだろうから、もう少し広く、全然お茶のこと知らない人にも気軽に楽しんでもらえるような会が出来たら素敵じゃない?例えば外国人観光客とかは、正座って難しいでしょ?でもここなら椅子だし、気軽にお茶もお菓子も楽しんでもらえるんじゃないかな?って思うの。」と祖父に言った。祖父はまだ納得いかない様子だが、白石は
「いいじゃないか。それで門戸が広がるっていうのは。現状維持も大事だが、せっかくこんな空間を作ったんだから、利用しないと勿体無い。ウチのにも話してみるよ。」と言ってくれた。