剣に願いを、掌に口づけを―最高位の上官による揺るぎない恋着―
 覚悟を決めるのは、どうやら自分の方らしい。

「セシリア」

 ルディガーが改めて力強く名前を呼んだ。

「俺たちの……俺の副官を務めるなら、俺のために命を懸けられるか?」

 温和な雰囲気も茶目っ気もない。ルディガーは覚悟を問うかのごとくセシリアに尋ねる。セシリアは一切目を逸らすことなく口を開いた。

「はい。副官としてこの命も、この体もあなたのためにすべて捧げます」

「……わかった。明日からよろしく頼むよ」

 ルディガーは軽く息を吐き、セシリアに手を差し出した。セシリアは彼の手と顔を交互に見て、ぎこちなく自分の右手を差し出す。

 緊張し指先に神経が集中する。わずかに彼と触れ合った瞬間、ルディガーが自分の方にセシリアを引いて強く握った。そして彼女の頭に自分の額を預ける。

「先は長いんだ、今日はゆっくりお休み。シリー」

 すぐそばで囁かれた優しい声色と手から伝わる温もりが体中を駆け巡る。すぐさま彼に目を向けると、物言いたげなセシリアに対しルディガーは悪戯っ子のような笑みを浮かべた。

「明日から、なんだろ?」

 だから今はまだセシリアは自分にとって大事な妹分というわけだ。ルディガーは言い聞かせる口調でセシリアに告げた。

「部下になったとしても、俺にとって君が大切な存在なのはなんら変わらないんだ。これだけは覚えておいて」

 上官からは身に余るほどの言葉だ。しかしセシリアはなにも返せないただ、しばらく握られた手は異様に熱かった。
< 62 / 192 >

この作品をシェア

pagetop