夜のしめやかな願い
「今日は何の用だ?
もう、互いに利用価値はないと思うが?」
「利用価値」
思ってもいない言葉に、さゆりはオウム返しに繰り返した。
「ああ。
今や、おまえを援助してやる金はない」
「別にお金なんて」
さゆりが小声で言いよどむと、宗臣は鼻で笑った。
「必要ない?
そんなことないだろう?
教師の給与だけでやっていけなくて、あちこちアルバイトをかけもちしているっていうのに?
満足に自分の練習もできていないっていうのに?」
図星をさされて、さゆりは口をつぐんだ。