夜のしめやかな願い
「だけど、別にお金が全てではないし」
幾分か、すねた口調で言い返す。
次の瞬間、襲われた衝撃に、さゆりは訳が分からなかった。
乾いた金属の衝突音と同時に後頭部がじんじんと痛む。
二の腕を掴まれ、引き起こされると同時に壁のキャビネに叩きつけられたのだ。
宗臣の指が喉笛に食い込む。
さゆりの口からぐえっとカエルのような音が出て、こんな状況の中、自分で可笑しくなる。
「言ったもんだな」
宗臣の瞳を見ると爛々と暗く光り、嘲笑を浮かべている。
「その金のために体を売ったのは誰だ?」
息ができないから、さゆりはなんの返答もできなかった。
ただ宗臣の瞳を見て、なんでこの人はこんなに傷ついているんだろうと思う。